2025年2月14日公開
英国で一番有名な王様、正確には歴史上で最も有名な国王は誰だろうか?現在のチャールズ3世をはじめ、最近の君主以外ではヘンリー8世が一番ではなかろうか?
ヘンリー8世の評判
この王様には様々な評価がある。在位は1509年4月22日~1547年1月28と37年9カ月強とイギリスの歴代の王様の中でも長い在位期間で、イングランド時代の中では5番目の長さだった。17歳で即位し55歳で亡くなるまで王の勤めを続けた。
その在位中の実績の中で一番有名なのは、カトリック教会からのイングランド国教会の独立だ。そして、自らイングランド国教会の長となったことだろう。現在に続く英国国教会の始まりはヘンリー8世にあった。これには、彼の跡継ぎ問題が関係していた。
190cmの美丈夫、ラテン語、フランス語、スペイン語ができ、乗馬を始めスポーツも得意、作曲も舞踏も得意で、文筆家でもあったという。絶頂期には、魅力的で教養があり、カリスマ性のある統治者として描かれたらしい。しかし、晩年には、好色、利己的、無慈悲で不安定な王との評価になってしまった。この評価が残り、悪王の代表とも言われている。
ヘンリーの長い結婚遍歴
ヘンリー8世は6回の結婚を繰り返した。
1509年、キャサリン・オブ・アラゴンと結婚。彼女は1516年にメアリー王女を出産した。この間ヘンリーは多くの愛人を持ち、その一人が男の子を生み、ヘンリーも庶子と認めた。
さらに、キャサリンの侍女であるメアリー・ブーリンと関係を持ったが、彼女の子供を認知しなかった。当時は庶子が王になるのは難しく、ヘンリーは強力な世継ぎ男子を欲していた。
ヘンリーはメアリー・ブーリンの妹であるアン・ブーリンを求めるようになったが、アンは愛人ではなく正式な結婚を求めた。
ヘンリーはキャサリンとの離婚を望んだが、キャサリンは元々ヘンリーの兄アーサーと短い期間ながら結婚していたため、結婚自体が教会法の教義に反していた。結婚は教皇の特別な赦免によって可能になったものだった。これに対し、ヘンリーは婚姻を無効として離婚しようとしたため、教皇と対立することになった。しかし、ヘンリーの意を受けたカンタベリー大司教によって、ヘンリーとキャサリンの結婚は無効とされた。
1533年にアンはヘンリーと結婚し、エリザベス王女(後のエリザベス1世)を生んだ。
ヘンリーは1534年に国王至上法を発布、自ら国教会の長となり、カトリック教会から離脱した。更にキャサリンを王宮から追放し、その部屋をアン・ブーリンに与えた。
1936年、元王妃キャサリンが病死した。アンは政治への介入を続け、それを快く思わない勢力が力を得つつあった。アンは流産を繰り返しし、姦通罪、近親相姦罪、魔術の罪で逮捕、処刑された。
処刑の翌日、ヘンリーはアンの侍女であったジェーン・シーモアと婚約、10日後に結婚した。1937年彼女はエドワード王子(後のエドワード6世)を生んだが、産褥死してしまう。
ヘンリーから次の王妃を探すよう命じられたクロムウェルは、アン・オブ・クレーブスを推薦した。ヘンリーはアンと結婚した。しかし、すぐに離婚を求めた。アンが以前別の男性と婚約していたことを理由に、結婚は無効とされた。
1540年、ヘンリーはアン・ブーリンの従妹かつ侍女であったキャサリン・ハワードに心を移し結婚した。しかし、キャサリンは以前婚約し、関係を持っていた男性を秘書として雇った。王の不在中に彼女は姦通罪と反逆罪で裁判にかけられ、1542年に処刑された。
翌年1543年、ヘンリーはキャサリン・パーと6度目で最後の結婚をした。
最後の妻もキャサリン
6人の妻の名前はキャサリンが3人、アンが2人、ジェーンが1人と、キャサリンの勝ち(?)となっている。6番目で最後の妻はキャサリン・パー、この映画の主人公だ。
彼女は、16歳、21歳でと2度の結婚をしたが、どちらも夫に病死され、寡婦となっていた。ヘンリーの3番目の妻ジェーン・シーモアの兄トマス・シーモアと交際を始めると、宮廷に出入りしヘンリーに見初められた。ヘンリーはトマスを公務で海外に派遣し、その不在時にキャサリンに求婚、1543年に結婚している。
31歳でヘンリー8世と結婚したキャサリン・パーは、母の違う3人の子供たち(メアリー、エリザベス、エドワード)を育て、教育した。肥満して足の腫瘍に苦しんでいた晩年のヘンリーの看護を侍医に任せず自ら行いヘンリーの信頼を獲得。夫の海外遠征時には摂政として国政を任されている。彼女はヘンリーと対等に学術談議ができるほどの知性を持っていて、イングランド王妃として初めて著書を上梓している。
映画のキャサリン・パーとヘンリー8世
映画と関係ない6人の妻についてつい長くなってしまった。
ヘンリー8世が英国国教会の設立者なのに対し、キャサリン・パーは急進的なプロテスタントという対立があった。結婚時点で50歳を過ぎていたヘンリーは肥満になり、怒りっぽくなっていた。海外遠征から帰ったヘンリーは急進派への怒りを募らせていた。宮廷では、王の取り巻きたちが様々な形で王妃を追い詰めていく様が描かれる。そして…ついにヘンリー8世の最期がやってくる。
キャサリン・パーを演じたのはアリシア・ヴィキャンデル、派手さはないが、知性的な女性といった印象がある。1988年、スウェーデン生まれ。
ヘンリー8世は意外にもジュード・ロ―。今までの彼からはちょっと想像できない役といえようか?1972年ロンドン生まれだから、ヘンリー8世の晩年とほぼ同じ年齢だ。
監督は1966年、ブラジル生まれのカリン・アイヌーズ。初めて日本で公開される作品だ。
『ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻』公式サイト:https://longride.jp/firebrand/