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クィーンズウェアの呼称を得た陶器”ウェッジウッド”

「イギリスの陶器の父」と呼ばれているジョサイア・ウェッジウッド(Josiah Wedgwood 1730-1795)。マイセンなどの高価な陶磁器を手に入れることができない一般の人でも買える手ごろな陶器を、しかも陶磁器のように美しいものを作りたいという願いから研究を重ね、ついに1763年に完成したのが後にクィーンズウェアと呼ばれるようになった陶器です。

クリームに似た色の初期のウェッジウッド陶器
完成して間もないころのジョサイア・ウェッジウッドのクウィーンズウェア

それまでのイギリスで作られていた陶器に比べ、繊細でクリームに似た色の美しい陶器が出来上がりました。そしてジョージ3世の妃、シャーロット王妃(Sophia Charlotte of Mecklenburg-Strelitz 1744-1818)の目に留まり、12人分の紅茶、コーヒーのセットの注文が入ったのです。

女王はジョサイア・ウェッジウッドが作りだしたこのクリーム色の陶器をたいそう気に入って、特別に「クィーンズウェア」と呼ぶことを許可します。そして瞬く間にその評判は広まり、イギリスを超えてヨーロッパにまで伝わります。

こうしてついにはロシア女帝エカチェリーナ2世(1729-1796)の耳に入ります。早速彼女は50名のためのディナーセットを注文しますが、それは一枚一枚にイギリスの1,222か所の風景が描かれた素晴らしいディナーセットでした。その数は全部で944点にも及び、1774年に完成、エカチェリーナ2世に届けられました。

ロシアのエカチェリーナ2世のために特別に作られたディナーセットの一枚

そしてエカチェリーナ2世は、このディナーセットが使われる予定だった彼女の宮殿、チェスメ宮殿(またの名をチェスメンスキー宮殿)が、カエルが沢山生息する沼地に建っていたことに因んで、一枚一枚の食器には緑のカエルが紋章のように描かれるよう条件を出しました。

ロシアのエカチェリーナ2世のための特別なディナーセット全てにカエルのシンボルが

現在エカチェリーナ2世のクィーンズウェアの大部分はロシアのエルミタージュ美術館にありますが、それ以外はロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館などの収蔵物になっています。

さて、女帝エカチェリーナのクィーンズウェアには程遠いものですが、かなり前に私もウェッジウッドのクィーンズウェアのディナーセットを買いました。それは私でも買えるほどお手頃な値段だったと記憶しています。そして、電子レンジ、食器洗い機にも耐えるという丈夫なもの。

クリーム色が特徴のクィーンズウェア

そしてヴィンテージ物としてアンティークショップでたまに見かけるクィーンズウェアは、定番はブルー地に白い浮彫のブドウの葉などがついていて初めて見た時にすっかり気に入りました。

ヴィンテージのクィーンズウェア
コーヒーポットやティーポット
珍しい色の花瓶
特にクリスマス時のお菓子用として活躍してくれる足の付いた深めのお皿
作られた当時のウェッジウッドのマーク

現在ウェッジウッドはフィンランド系の企業が所有しているということで、クィーンズウェアの生産が続いているかどうかは不明ですが、18世紀にジョサィア・ウェッジウッドが世に送り出した特別なこの陶器は、これまで王族のみならず一般の人達の食卓を飾り、私を含め多くの人たちに歓びを与えてきました。


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