愛犬との別れ、イングリッシュ・ブルーベルとの出会い
イギリスに住み始めて初めて飼った愛犬が亡くなり、悲しみのどん底にあった時のこと。田舎の火葬場から遺灰を家に連れて帰る途中に、森の近くを通りかかった途端に私の目に飛び込んできたのがイングリッシュ・ブルーベルの群れでした。
これがイングリッシュ・ブルーベルと私の初めての出会いでした。時期的にそろそろ終わりかけてはいましたが、それでもその美しさに一瞬癒されたのでした。
その翌年から、私は愛犬のことを思い出しながら古代の森に咲くと言われるイングリッシュ・ブルーベルを求めて、毎年この時期になるとあちこちの森に出かけるようになりました。
イングリッシュ・ブルーベルの花言葉
それは野生のブルーベルです。高い木々の下に、まるで森の妖精が青いカーペットを敷き詰めたかのように咲くイングリッシュ・ブルーベルは実に神秘的です。まるで別の世界に引き込まれたようです。イングリッシュ・ブルーベルの花言葉は「不変の愛」「謙遜」「誠実」「感謝」などがありますが、人や音に囲まれた都会から離れて鳥の鳴き声しか聞こえない森の中で、やってくる人だけに感動を与えるイングリッシュ・ブルーベルに相応しい花言葉と言えるでしょう。
昔は、「イングリッシュ・ブルーベルのリースを頭に載せると嘘はつけない。」とも言われていたそうです。
絶滅の危機 純粋のイングリッシュ・ブルーベル
ところが、純粋のイングリッシュ・ブルーベルは、今絶滅の危機に瀕しています。
何故かといいますと、スパニッシュ・ブルーベル、またはその混血のブルーベルが入ってきたのが大きな原因です。これらのブルーベルは生存力、繁殖力が強く、イングリッシュ・ブルーベルの中に入り込んできているのです。
イングリッシュ・ブルーベルとスパニッシュ・ブルーベル
世界中に咲くイングリッシュ・ブルーベルの半分はイギリスにあると言われますが、1963年に、野生に咲くイングリッシュ・ブルーベルの中に初めてスパニッシュとの混血が発見され、それ以降どんどん純粋のイングリッシュ・ブルーベルが混血化しています。そこで現在イングリッシュ・ブルーベルを保護する活動がイギリス各地で行われています。法的にも保護植物として守られていますので、勝手に摘んだり、根こそぎ掘り返すことはできません。それは訪れる人だけではなく、その土地を所有する人も同じです。
では、イングリッシュ・ブルーベルとスパニッシュ・ブルーベルの違いを見てみましょう。
これがスパニッシュ・ブルーベルです。
イングリッシュ・ブルーベルとスパニッシュ・ブルーベルの混血です。
「森の妖精に誘拐され、永遠に森をさまよう」言い伝え
イングリッシュ・ブルーベルはデリケートな花なので、森で見かけたら、葉を踏まないように十分気を付けましょう。葉が踏みつけられたイングリッシュ・ブルーベルは元気を失い、もとに戻るまでには何年もかかります。
「ブルーベルを摘み取ると、森の妖精に誘拐され、永遠に森をさまようことになる」という言い伝えは、今保護植物になっているイングリッシュ・ブルーベルに関しては適切な忠告にさえ思えます。
イングリッシュ・ブルーベルに出会える場所
では、どこでこの神秘に満ちたイングリッシュ・ブルーベルに出会えるのでしょう?
先ほどお話ししましたように、古代の森で良く見かけます。そのようなところは交通も不便で、車で行って、森まで歩く場合が多いのですが、ロンドンに滞在する方は、キューガーデンのシャーロット女王のコテージのそばでも見ることができます。
ただ、ここのブルーベルは1899年に人の手で植えられたものです。イングリッシュ・ブルーベルの美しさは、森の木々によって強い陽の光から守られて咲いているのが本来持つイングリッシュ・ブルーベルの美しさだと思います。
ですから太陽に向かって顔を上げることもなく、いつも恥ずかしそうに遠慮がちに咲いています。
どうしてもイングリッシュ・ブルーベルを庭で咲かせたいと、園芸店やネットで球根を買ってもそれはスパニッシュ、またはスパニッシュとの混血の場合が多いのです。
機会があったら是非4月から5月にかけてイギリスの古代の森に出かけてみてください。
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