2025年5月20日、ロンドンのバッキンガム宮殿で、王室主催のガーデンパーティーが開催されました。この伝統的な行事は、19世紀のヴィクトリア女王の時代から続くもので、公共サービスに貢献した人々を称える場として知られています。今年のパーティーでは、約8,000人の招待客が王室の庭園に集い、王室メンバーとの交流を楽しみました。 筆者は幸運にもこのガーデンパーティーに招待され参加することができました。そのときの様子をご紹介します。
郵送で送られてくる立派な招待状
国王の記章が付いた郵便が宮内長官から送られてきました。上質の招待状とともに、当日持参するもの(この立派な招待状ではなく色別に分けられた入場カードを持参します)、そのほか時間割やドレスコード、どのゲートから入場するかなどの注意事項が添えられています。
何を着ていこうかな?
最初に気になったのは服装です。バッキンガム宮殿のガーデンパーティーは、英国王室主催の格式ある行事ですので、服装にも厳格なドレスコードがあります。
以下に、男女別に詳しくご説明します。
女性のドレスコード
- ワンピースまたはスーツ(パンツスーツも可)と帽子またはファシネーター(ヘッドピース)
- 制服や民族衣装(日本の場合は着物)
膝丈~ミディ丈の上品なワンピースが主流です。露出の多いドレスは避けて、袖付きまたは羽織りのあるものが望ましいです。帽子やファシネーターは必須ではありませんが、強く推奨されます。そのかわり民族衣装の場合帽子は必要ありません。靴は、ガーデンでの開催のため、ピンヒールよりも太めのヒールやウェッジ、またはエレガントなフラットシューズが好まれます。
男性のドレスコード
- モーニングコート
- ビジネススーツ、ラウンジスーツ
- 制服や民族衣装
モーニングコートは最も正式な装いで、グレーまたはブラックのモーニングジャケット、ベスト、ストライプのパンツ。トップハットと、傘を手にすることは必須ではありませんが、王室関係者は正装です。一般の招待客はスーツ+ネクタイが適切でしょう。シャツは白や淡い色、ネクタイは上品なものが好まれます。
バッキンガム宮殿のガーデンパーティーは、装いそのものが英国文化や社交界の一部です。招待客にとっては、「装うこと」自体がその日を特別なものにする重要な要素となります 。
タイムテーブル:バッキンガム宮殿ガーデンパーティー
o 15:00頃:ゲートオープン 招待客は、バッキンガム宮殿の庭園に入場します。この時間から、庭園内を自由に散策し、提供される紅茶や軽食を楽しむことができます。 o 16:00:王室メンバーの到着と国歌演奏 王室のメンバーが庭園に登場し、軍楽隊による国歌の演奏が行われます。これにより、パーティーが正式に開始されます。 o 16:00~17:30頃:王室メンバーとの交流 王室のメンバーは、庭園内の特定の「レーン」を通って招待客と交流します。各メンバーは異なるルートを取り、ランダムに選ばれた招待客と会話を交わします。この間、軍楽隊は音楽を演奏し続け、雰囲気を盛り上げます。 o 17:30~18:00:終了 パーティーは18:00頃に終了します。招待客は、庭園を後にし、退出します。 |
このようなスケジュールにより、ガーデンパーティーは厳格な時間管理のもとで進行され、王室と招待客との交流が円滑に行われます。
キャサリン皇太子妃、病気療養後の公務復帰
この日の注目の一つは、キャサリン皇太子妃の公務復帰でした。がん治療のため公務に参加するのは数えるほどに控えていた彼女が、夫のウィリアム皇太子とともに姿を現しました。キャサリン妃は、2022年のエリザベス女王のプラチナジュビリーで着用した、エミリア・ウィックステッドのバターイエローのドレスと、フィリップ・トレーシーの帽子を再び身にまとい、明るい笑顔で招待客と交流しました。
心温まる再会と特別なゲストたち
パーティーでは、特別なゲストとの感動的な再会もありました。若くしてがんで亡くなった写真家リズ・ハットンさんの家族が招待され、キャサリン妃はリズさんの母親と抱擁を交わし、新たに設立されたがん研究支援団体「Capture」への支援を約束しました。
また、両足を失いながらも慈善活動に励む10歳のトニー・ハッジェル君も出席。彼は2024年のパーティーに交通渋滞で参加できなかったことから、王室の特別な招待を受け、今回の出席が実現しました。ウィリアム皇太子との再会を果たし、笑顔で会話を交わす姿が印象的でした。
王室メンバーと多彩な招待客
この日のパーティーには、ウィリアム皇太子夫妻のほか、ユージェニー王女、ザラ・ティンダル、エドワード王子とソフィー・エディンバラ公爵夫人、グロスター公爵夫妻など、多くの王室メンバーが出席しました。彼らは、ホロコースト生存者のスティーブン・フランク氏や、ウィリアム皇太子のホームレス支援プロジェクト「Homewards」の参加者など、多様な背景を持つ招待客と交流しました。
伝統と格式を感じる午後のひととき
バッキンガム宮殿のガーデンパーティーでは、毎回約27,000杯の紅茶、20,000個のサンドイッチ、20,000個のケーキが提供されます。招待客は、王室の庭園を散策しながら、音楽の演奏を楽しみ、王室メンバーとの会話を楽しむことができます。このような格式ある行事は、王室と国民の絆を深める貴重な機会となっています。
未来への希望を感じさせる一日
キャサリン妃の公務復帰や、特別なゲストとの心温まる交流など、今年のガーデンパーティーは、困難を乗り越えた人々の姿と、王室の変わらぬ慈愛を感じさせるものでした。伝統と格式を守りつつも、時代とともに進化する王室の姿勢が、多くの人々に希望と感動を与えた一日となりました。